1999 年。当時なぜか山岳部員だった俺は、稜線上の登山道が F 県、その両サイドが Y 県と N 県に分かれているという奇妙な県境を持つ某山を真夏に縦走しなければならない事情があった。
2 泊目に縦走路上の小屋脇に幕営し、3 日目序盤に幕営地とわりと近くの山頂をピストンしたのであった。
無事登頂した後の復路である。テレビの撮影をしていた 2 人組に声を掛けられた。前日から彼らの存在は把握していたし、往路でも植物か何かを撮影してた彼らを横目に歩いていた。彼らは山頂に向かう人たちに扮した我々を撮影したいとのことだった。ただ、我々は荷物をテントにデポし、軽装だったのだが、それは不自然であるとのことで、自分を含めた 2 名が撮影クルーの重いザックを背負わされ、他の選ばれし者たちとともに再び山頂に向けて歩く後ろ姿を撮影されたのである。大人の事情をまた 1 つ知ってしまった瞬間でもあった。
その後話を聞くと、某大野雄二さんのテーマソングで有名な紀行番組の撮影らしく、放映は約 1 ヶ月後ということだったが、残念ながら放映圏外であり、その自分たちの後ろ姿を今まで見たことはなかった。
某山番組でその山の回が去年あったので録画していたのをようやく見たのだが、なんとそのときの映像が使われているではないか。我々の後ろ姿は一瞬で、そこから山頂に振るというものだったが、標高 2100 メートルで急遽調達されたエキストラに 15 年ぶりに再会することができたという話。