ヨーキョクデイ

100% pure impurities, which may imply some value. (j は虚数単位)

直角二等辺三角形な分度器があるならば、その目盛り幅は

直角二等辺三角形な三角定規に分度器の機能が載っていれば小学生の算数道具が減るのではないかという発想。すなわち通常の半円状の分度器の $0\degree$ から $90\degree$ の部分と $90\degree$ から $180\degree$ の部分を直線状にするには目盛り幅をどうすればよいのかということを考える。ここでは $0\degree$ から $90\degree$ の部分のみを考える。

ある角度における $0\degree$ からの長さ

$\mathrm{OA}=\mathrm{OB}=1$ な直角二等辺三角形 $\mathrm{OAB}$ を考える。

直角二等辺三角形 OAB と斜辺上の点 P

辺 $\mathrm{AB}$ 上に点 $\mathrm{P}$ をとり、$\theta \triangleq \angle \mathrm{AOP}$ とおくと、\begin{empheq}[left=\empheqlbrace]{align}
\triangle \mathrm{OAP} &= \frac{1}{2} \mathrm{OA} \cdot \mathrm{OP} \sin{\angle \mathrm{AOP}} = \frac{1}{2} \mathrm{OP} \sin{\theta} \\
\triangle \mathrm{OBP} &= \frac{1}{2} \mathrm{OB} \cdot \mathrm{OP} \sin(\frac{\pi}{2} - \angle \mathrm{AOP}) = \frac{1}{2} \mathrm{OP} \cos{\theta}
\end{empheq}である。$\triangle \mathrm{OAP} + \triangle \mathrm{OBP} = \triangle \mathrm{OAB} = 1/2$ ゆえ、\[
\frac{1}{2} \mathrm{OP} (\sin{\theta}+ \cos{\theta}) = \frac{1}{2}\]より、\begin{align}
\mathrm{OP}
&=\frac{1}{\sin{\theta}+ \cos{\theta}} \\
&= \frac{1}{\sqrt{2} \sin(\theta + \frac{\pi}{4})}
\end{align}となるから、\[\triangle \mathrm{OAP} = \frac{\sin{\theta}}{2\sqrt{2} \sin(\theta + \frac{\pi}{4})}\]と表せる。いっぽうで、\[\triangle \mathrm{OAP} = \frac{1}{2} \mathrm{OA} \cdot \mathrm{AP} \sin{\angle \mathrm{OAP}} = \frac{1}{2\sqrt{2}} \mathrm{AP}\]とも表せるから、\[\frac{\sin{\theta}}{2\sqrt{2} \sin(\theta + \frac{\pi}{4})} = \frac{1}{2 \sqrt{2}} \mathrm{AP}\]が成り立ち、\[\mathrm{AP} = \frac{\sin{\theta}}{\sin(\theta + \frac{\pi}{4})}\]である。

目盛り幅

さて、正の数 $t$ および非負整数 $k$ について、辺 $\mathrm{AB}$ 上の点 $\mathrm{P}_k$ が $\angle \mathrm{AOP}_k = kt$ を満たすものとする。

直角二等辺三角形 OAB と斜辺上の点 P_k たち

このとき、上記の議論より、\[\mathrm{AP}_k= \frac{\sin{kt}}{\sin(kt + \frac{\pi}{4})}\]が成り立つ。ゆえに、$kt \leq \pi/2$ であるとき、\begin{align}
\mathrm{P_k P_{k-1}}
&= \mathrm{AP}_k - \mathrm{AP}_{k-1} \\
&= \frac{\sin{kt}}{\sin(kt + \frac{\pi}{4})} - \frac{\sin{(k-1)t}}{\sin((k-1)t + \frac{\pi}{4})} \\
&= \frac{\sin((k-1)t + \frac{\pi}{4}) \sin{kt} - \sin(kt + \frac{\pi}{4})\sin{(k-1)t}}{\sin(kt + \frac{\pi}{4}) \sin((k-1)t + \frac{\pi}{4})} \\
&= \frac{\sin{kt} \cos{(k-1)t} - \cos{kt} \sin{(k-1)t}}{\sqrt{2} \sin(kt + \frac{\pi}{4}) \sin((k-1)t + \frac{\pi}{4})} \\
&= \frac{\sin{t}}{\sqrt{2} \sin(kt + \frac{\pi}{4}) \sin((k-1)t + \frac{\pi}{4})}
\end{align}である。この分母を変形したバージョンとして、\begin{align}
\mathrm{P_k P_{k-1}}
&= \frac{\sin{t}}{\sqrt{2} \cdot \frac{1}{2} \qty(-\cos((2k-1)t + \frac{\pi}{2}) + \cos{t})} \\
&= \frac{\sqrt{2}\sin{t}}{\sin{(2k-1)t} + \cos{t}}
\end{align}が得られる。また、分子を変形したバージョンとして、\begin{align}
\mathrm{P_k P_{k-1}}
&= \frac{\sin( (kt + \frac{\pi}{4}) - ((k-1)t + \frac{\pi}{4}) )}{\sqrt{2} \sin(kt + \frac{\pi}{4}) \sin((k-1)t + \frac{\pi}{4})} \\
&= \frac{\sin(kt + \frac{\pi}{4}) \cos((k-1)t + \frac{\pi}{4}) - \cos(kt + \frac{\pi}{4}) \sin((k-1)t + \frac{\pi}{4})}{\sqrt{2} \sin(kt + \frac{\pi}{4}) \sin((k-1)t + \frac{\pi}{4})} \\
&= \frac{1}{\sqrt{2}} \qty( \cot((k-1)t + \frac{\pi}{4}) - \cot(kt + \frac{\pi}{4}) ) \\
&= \frac{1}{\sqrt{2}} \qty( \tan(kt - \frac{\pi}{4}) - \tan((k-1)t - \frac{\pi}{4}) )
\end{align}が得られる。これは $\mathrm{O}$ を中心に全体を $-\pi/4$ 回転した図を想像するとわかりやすいかも、というか、これを出発点にしたほうがよかったかも。

回転した直角二等辺三角形 OAB

$t=\pi/180$ とすると、辺 $\mathrm{AB}$ 上に $0\degree$ から $90\degree$ までの $1\degree$ 刻みの目盛りを割り振ったときの目盛りの間隔がわかる。すなわち $(k-1)\degree$ から $k\degree$ の間の間隔は $\mathrm{P_k P_{k-1}}$ であって、上記の各バージョンで表せば、\begin{align}
\mathrm{P_k P_{k-1}}
&= \frac{\sin{\frac{\pi}{180}}}{\sqrt{2} \sin(\frac{k \pi}{180} + \frac{\pi}{4}) \sin(\frac{(k-1) \pi}{180} + \frac{\pi}{4})} \\
&= \frac{\sqrt{2}\sin{\frac{\pi}{180}} }{\sin{\frac{(2k-1) \pi}{180}} +\cos{\frac{\pi}{180}}} \\
&= \frac{1}{\sqrt{2}} \qty( \tan(\frac{k \pi}{180} - \frac{\pi}{4}) - \tan(\frac{(k-1) \pi}{180} - \frac{\pi}{4}) )
\end{align}となる。

蛇足

一般に $n$ を正の整数として $t=\pi/2n$ のとき、\[\sum_{k=1}^n \mathrm{P_k P_{k-1}} = \mathrm{AB} = \sqrt{2}\]が成り立つが、\begin{align}
&\phantom{{}={}}\sum_{k=1}^n \frac{1}{\sqrt{2}} \qty( \tan(\frac{k\pi}{2n} - \frac{\pi}{4}) - \tan(\frac{(k-1)\pi}{2n} - \frac{\pi}{4}) ) \\
&= \frac{1}{\sqrt{2}} \qty( \tan(\frac{n\pi}{2n} - \frac{\pi}{4}) - \tan(\frac{0\pi}{2n} - \frac{\pi}{4}) ) \\
&= \frac{1}{\sqrt{2}} \qty( \tan{\frac{\pi}{4}} - \tan(- \frac{\pi}{4}) ) \\
&= \sqrt{2}
\end{align}が望遠鏡和より確認できる。

また、\[\sum_{k=1}^n \frac{\sin{\frac{\pi}{2n}}}{\sin{\frac{(2k-1) \pi}{2n}} +\cos{\frac{\pi}{2n}}} = 1\]なる三角関数の和に関する非自明な関係式が得られる。これは Dirichlet 核\[D_k(x) \triangleq \frac{\sin{\qty(k + \frac{1}{2}) x}}{\sin{\frac{x}{2}}}\]を用いて、
\[\sum_{k=1}^n \frac{1}{D_{k-1}(\frac{\pi}{n}) + \cot{\frac{\pi}{2n}}} = 1\]とも表せるが、ここまでやる意味は不明。

実際にある

ドイツ語圏周辺では Geodreieck なる、このようなものが実際に用いられているらしい。

HDD 新調

インクリメンタル PC 更新をしておる、Windows 10 延長サポート民であります。

さて、先日の SSD 更新に続いて、2 台積んでいる HDD を先月と今月と相次いで更新した。稼働時間が 30000 時間程度になっていたので。ともに WD の WD80EAAZ であって、8 TB 品である。当該 HDD を含め、価格が急騰している昨今であって、23k から 24k 程度で推移していたころになんとか入手しておいたのだ。なんとなく店舗と時期をずらして別ロットを入手したのだが。

Acronis True Image for Western Digital を用いてクローンしたのだが、推定残り時間が非常に当てにならない。

クローン中の様子

実際には 0.5 TB/h くらいのクローン速度なのだが、それにしてもとんでもない時間が表示されるのはなんなのか。

メモリの高騰具合がひどすぎて、それさえなければ新 PC を組むんだけどなぁ。

閏年の判定を三角関数で書く

日曜数学 Advent Calendar 2025 - Adventar の 12 日目の記事であります。

整数 $a,b$ について $a$ は $b$ の整数倍であることを $b \mid a$、そうでないことを $b \nmid a$ と表すものとする。ここで、閏年は次のように定義される。

閏年
整数 $y$ について西暦 $y$ 年(グレゴリオ暦)を考える。$4 \mid y$ かつ $100 \nmid y$ または $400 \mid y$ のとき $y$ は閏年、そうでないとき平年と呼ぶ。
このとき、\[L(y) = \begin{cases}
1 & \text{($y$ は閏年)} \\
0 & \text{($y$ は平年)}
\end{cases}\]となる閏年判定関数 $L(y)$ を三角関数を用いて表したい。

準備

三角関数と天井関数・床関数による倍数判定

$a,b$ を実数(ただし $b \neq 0$)として、\[\sin{\frac{a \pi}{b}} = 0 \iff \cos{\frac{a \pi}{b}} = \pm 1 \iff \text{$a$ は $b$ の整数倍}\]が成り立つ。すなわち、\[\left\lceil \abs{\sin{\frac{a \pi}{b}}} \right\rceil = \left\lceil \sin[2]{\frac{a \pi}{b}} \right\rceil = \begin{cases}
0 & \text{($a$ は $b$ の整数倍)} \\
1 & \text{(そうでない)}
\end{cases}\]および\[\left\lfloor \abs{\cos{\frac{a \pi}{b}}} \right\rfloor = \left\lfloor \cos[2]{\frac{a \pi}{b}} \right\rfloor = \begin{cases}
1 & \text{($a$ は $b$ の整数倍)} \\
0 & \text{(そうでない)}
\end{cases}\]が成り立つ。

not 関数

実数 $x$ の関数 $\mathrm{not}(x)$ を\[\mathrm{not}(x) \triangleq \left\lfloor \frac{1}{1 + \abs{x}} \right\rfloor = \begin{cases}
1 & \text{($x = 0$)} \\
0 & \text{($x \neq 0$)}
\end{cases}\]と定める。

閏年判定関数(案 1)

定義を論理演算的に表した形で、\[\left\lfloor \abs{\cos{\frac{\pi y}{4}}} \right\rfloor \qty(\left\lceil \abs{\sin{\frac{\pi y}{100}}} \right\rceil + \left\lfloor \abs{\cos{\frac{\pi y}{400}}} \right\rfloor) \]と書けそうである。ただし $+$ は通常の和ではなく論理和である。ただ、\[\left\lceil \abs{\sin{\frac{\pi y}{100}}} \right\rceil = \left\lfloor \abs{\cos{\frac{\pi y}{400}}} \right\rfloor = 1\]となる整数 $y$ が存在しなければ、通常の和としてもよい。実際に、$400 \mid y$ ならば $100 \mid y$ なので、上記が成り立つような整数 $y$ は存在しない。

ゆえに、閏年判定関数(案 1)として、\[L(y) \triangleq \left\lfloor \abs{\cos{\frac{\pi y}{4}}} \right\rfloor \qty(\left\lceil \abs{\sin{\frac{\pi y}{100}}} \right\rceil + \left\lfloor \abs{\cos{\frac{\pi y}{400}}} \right\rfloor) \]と書ける。

ただ、なにか味気ない。

閏年判定関数(案 2)

別のアプローチで考えてみよう。$y$ が閏年のとき $f(y)=0$、平年のとき $f(y) \neq 0$ となるような関数 $f(y)$ を適当に定めれば、\[L(y) = \mathrm{not}(f(y))\]と書ける。

ここで、$f(y)$ を\[\frac{ \sin{\frac{\pi y}{4}} \sin{\frac{\pi y}{400}} }{ \sin{\frac{\pi y}{100}} }\]のような形で書ければよさそうである。$100 \mid y$ のとき $0/0$ の形になるようにあえてこのようにしたが、ひとまず極限を用いて、\[f(y) \triangleq \lim_{t \to y} \frac{ \sin{\frac{\pi t}{4}} \sin{\frac{\pi t}{400}} }{ \sin{\frac{\pi t}{100}} }\]と定義しておき、これが $100 \mid y$ のときにいい具合に収束してくれればよい。

well-defined か

$y$ によって場合分けする。ナイーブに

  • $4 \nmid y$
  • $4 \mid y$ かつ
    • $100 \mid y$ かつ $400 \mid y$
    • $100 \mid y$ かつ $400 \nmid y$
    • $100 \nmid y$ かつ $400 \mid y$
    • $100 \nmid y$ かつ $400 \nmid y$

と場合分けできるが、

  • $4 \nmid y$
  • $4 \mid y$ かつ
    • $400 \mid y$
    • $100 \mid y$ かつ $400 \nmid y$
    • $100 \nmid y$

としてよい。

それぞれの場合について考えると、$4 \nmid y$ のとき、分母・分子はいずれも非 $0$ であるから $f(y) \neq 0$ である。

$4 \mid y$ のとき分子は $0$ である。$100 \nmid y$ のとき、分母は非 $0$ だから $f(y) = 0$ である。$100 \mid y$ のとき $0/0$ の不定形となるが、$m$ を整数として、\[\begin{align}
\lim_{t \to 100m} \frac{\qty( \sin{\frac{\pi t}{4}} \sin{\frac{\pi t}{400}} )'}{\qty( \sin{\frac{\pi t}{100}} )'}
&= \lim_{t \to 100m} \frac{ \frac{\pi}{4} \cos{\frac{\pi t}{4}} \sin{\frac{\pi t}{400}} + \frac{\pi}{400} \sin\frac{\pi t}{4} \cos\frac{\pi t}{400} }{\frac{\pi}{100} \cos{\frac{\pi t}{100}} } \\
&=\lim_{t \to 100m}
\frac{
100 \cos{\frac{\pi t}{4}} \sin{\frac{\pi t}{400}} + \sin{\frac{\pi t}{4}} \cos{\frac{\pi t}{400}}
}{
4 \cos{\frac{\pi t}{100}}
} \\
&= \frac{100 \cos{25 m \pi} \sin{\frac{m \pi}{4}} + \sin{25 m \pi} \cos{\frac{m \pi}{4}}}{4 \cos{m \pi} } \\
&=25 \sin{\frac{m \pi}{4}}
\end{align}\]となり収束するが、$m$ によってその値が異なる。すなわち、$400 \mid y$ のとき $f(y) = 0$ であり、$100 \mid y$ かつ $400 \nmid y$ のとき $f(y) \neq 0$ であることが l'Hôpital の定理より従う。

これにより $f(y)$ は well-defined であるといえる。

不定形の解消

定義に極限を用いたくないので、除去可能特異点は除去する。

倍角の公式(積)

$n$ 倍角の公式を積の形で書けるので、これを用いる。すなわち、\[\sin{n\theta} = 2^{n-1} \prod_{k=0}^{n-1} \sin(\theta + \frac{k \pi}{n})\]が成り立つから、$n=25,\theta=\pi y/100$ として、\begin{align}
\sin{\frac{\pi y}{4}}
&= 2^{24} \prod_{k=0}^{24} \sin(\frac{\pi y}{100} + \frac{k \pi}{25}) \\
&= 2^{24} \sin{\frac{\pi y}{100}} \prod_{k=1}^{24} \sin(\frac{\pi y}{100} + \frac{k \pi}{25})
\end{align}である。ゆえに、\begin{align}f(y)
&= 2^{24} \sin{\frac{\pi y}{400}} \prod_{k=1}^{24} \sin(\frac{\pi y}{100} + \frac{k \pi}{25}) \\
&= 2^{24} \sin{\frac{\pi y}{400}} \prod_{k=1}^{24} \sin{\frac{\pi (y+4k)}{100}}
\end{align}となる。総乗が $24$ 個の因子からなって醜いので、積和の公式から\begin{align}f(y)
&= 2^{24} \sin{\frac{\pi y}{400}} \prod_{k=1}^{12} \sin(\frac{\pi y}{100} + \frac{(25-k) \pi}{25}) \sin(\frac{\pi y}{100} + \frac{k \pi}{25}) \\
&= 2^{24} \sin{\frac{\pi y}{400}} \prod_{k=1}^{12} \frac{1}{2} \qty( \cos( \pi - \frac{2k \pi}{25}) - \cos(\frac{2\pi y}{100} + \pi) ) \\
&= 2^{12} \sin{\frac{\pi y}{400}} \prod_{k=1}^{12} \qty(\cos{\frac{\pi y}{50}} - \cos{\frac{2k \pi}{25}})
\end{align}などと変形できるが、方法はいくつかありそう。頭の定数倍を除去したものを改めて $f(y)$ としてもよい。もうちょっとシンプルな見た目にならないだろうか。

第 2 種 Chebyshev 多項式

第 2 種 Chebyshev 多項式 $U_n (x)$ は、\[\sin{n \theta} = U_{n-1}(\cos{\theta}) \sin{\theta} \]を満たす $n$ 次の多項式。これを用いて、$n=25,\theta=\pi y/100$ とすると、\[\sin{\frac{\pi y}{4}} = U_{24} \qty(\cos{\frac{\pi y}{100}}) \sin{\frac{\pi y}{100}} \]より、\[f(y) = U_{24} \qty(\cos{\frac{\pi y}{100}}) \sin{\frac{\pi y}{400}} \]とシンプルに書ける。ただ、$U_{24}(x)$ は $24$ 次式で、$x$ の偶数乗の項 $13$ 個の和だ。

蛇足ながら、上記 $U_{n-1}(\cos{\theta})$ の表式は、回転行列について行列の冪をもとの行列と単位行列の線型和で表すと得られるはず。

Dirichlet 核

Dirichlet 核 $D_n(x)$ は、\[D_n(x) \triangleq 1 + 2 \sum_{k=1}^{n} \cos{kx}\]と表される*1。このとき、\[\sin{(2n + 1) x} = D_n(2x) \sin{x} \]が成り立つから、これを用いて $n=12,x=\pi y/100$ とすれば、\[\sin{\frac{\pi y}{4}} = D_{12} \qty(\frac{\pi y}{50}) \sin{\frac{\pi y}{100}} \]より、\[f(y) = D_{12} \qty(\frac{\pi y}{50}) \sin{\frac{\pi y}{400}} \]と、これもまたシンプルに書ける。が、$D_{12}$ もまた $13$ 個の項からなる。

また、一般に正の奇数 $2n + 1,2m + 1$ について、\begin{align}\sin{(2n + 1)(2m + 1) x}
&= D_n(2 (2m+1) x) \sin{(2m+1) x} \\
&= D_n(2 (2m+1) x) D_m(2x) \sin{x}\end{align}となるから、$n=m=2,x=\pi y/100$ とすれば\[f(y) = D_{2} \qty(\frac{\pi y}{10}) D_{2} \qty(\frac{\pi y}{50}) \sin{\frac{\pi y}{400}} \]とも書けて総和の項数を減らせる。

完成形

以上の議論より、たとえば Dirichlet 核を用いた後者のバージョンを書き下して、\[L(y) \triangleq \left\lfloor \frac{1}{1 + \abs{(1+2\cos{\frac{\pi y}{10}}+2\cos{\frac{\pi y}{5}}) (1+2\cos{\frac{\pi y}{50}}+2\cos{\frac{\pi y}{25}}) \sin{\frac{\pi y}{400}}}} \right\rfloor\]などと表せる。

もうちょっと変な方法がありそう。さて、今年も来年も平年であるが、なんでこんなことをしているのだろう。

*1:これを 1/2 倍した定義もあるようだ

SSD 新調

Windows 10 延長サポート民であります。

もうすぐ組んで 10 年になるパソコンだが、C ドライブが入っている SSD がパンパンになっているので新調することにした。当時は M.2 な SSD があまり手頃な値段で入手できなかった気がして、SATA のケーブル経由だったのだが、今や NVMe 接続の SSD が非常にこなれた値段になっているので、そちらをチョイス。Nextorage の G シリーズ LE なるやつの 1TB 品である。

従来は SanDisk の Extreme PRO とやらの 240GB 品だったので 4 倍程度の増量である。Amazon のセールで 10k 弱で買えたので。

こちらに旧 SSD をまるっとクローンするわけだが、それには GUI 付き Clonezilla たる Rescuezilla を用いた。
rescuezilla.com
起動ディスクに関して SATA から NVMe へのクローン後は Windows の起動が失敗しがちで、セーフモード的なヤツからスタートアップ修復をすることになりそうだと予習していたのだが、その必要はなくあっさりと起動しやがったので吉。

Rescuezilla でクローン中の様子

そのうちパソコンをまるごと新調すると思うのだが、それに向けてのステップだ。ただ、旧 SSD と同型のものがもう 1 台搭載されてて、そちらもパンパンなので、ちょいと新 SSD にデータを疎開させたりすべきだ。

US 配列のキーボードに新調したので諸問題を PowerToys で解決する話

16 年ぶりのキーボード新調である。
e10s.hateblo.jp

さんざん固体やら液体やらを受け止めてきたキーボードであるが、いよいよ特定のキーの打鍵感が損なわれてきた。よく使うキーであるだけになかなかのストレスなので新調してみた次第。

今までと同じく FILCO であって、Majestouch Stingray の赤軸である。そして US 配列である。市場から在庫が切れつつあるので滑り込みでの入手である。

長いことパンタグラフキーボードを使ってきたものの、メカニカルキーボードに変えたいという希望はずっとあって、それでも標準的な厚みのものはどうにも使いづらいのは知っていたので、そういう譲歩などが入ったチョイスである。

諸問題

ただしちょっとした障害がある。記号の位置が変わったのは慣れればよいだけの話で、とくにプログラミング時に US 配列のほうがメリットが大きいのでそうしたのであるから。通常の使用時にいくつか問題があるのだ。

  • IME のオン・オフ切り替え問題
  • Caps Lock が邪魔
  • 右 Alt が中央に寄りすぎ

PowerToys の Keyboard Manager で解決

MicroSoft 謹製の PowerToys には Keyboard Manager なる機能があり、キーの再マッピングが可能である。

ここで、IME とくに ATOK の使用を念頭に置いている。従来の JIS 配列を使っていたときには半角 / 全角キーで ATOK のオン・オフを切り替えていたが、当該の場所には `(バッククオート)キーがある。ここで、Alt なしで ` の位置を押したときに半角 / 全角を押したときと同じ効果を得たいと左手さんがおっしゃっているので、仮想キーコード VK_243 が送出されるようにした。すると ` キーがいなくなるので、害悪な Insert の位置を押したときに ` を押したことになるように設定した。これに伴って物理的にこれらのキーキャップを交換した。ATOK の設定はそのままだ。

次に Caps Lock の問題だ。JIS 配列では当該キーは修飾キーなしでは英数として機能するが、誤タイプ対策で ATOK 側では何も起きないように設定している。これが US 配列では Caps Lock として機能するので、これを Keyboard Manager 側で無効化した。

そして右 Alt が中央に寄りすぎている問題である。JIS キーボードではスペースバーの右側に日本語変換関連のキーたちがいるのでわりと左側に追いやられているが、/ の下にいた右 Alt はその左側にいて、そこには右 Win キーがいる。左 Win キーはそれなりに使うが、右 Win キーは使わないので、これを右 Alt に置き換えた。右手でテンキーとのコンビネーションを使うことがしばしばあるので、慣れるとかの前に指が届かない。

まとめると、

  • `VK_243
  • Caps Lock→無効
  • Insert`
  • 右 Win右 Alt

という具合だ。これらの設定で Caps LockInsert右 Win が存在しないという警告が Keyboard Manager から出るが、無慈悲にもそれを受け入れるのである。

Keyboard Manager の設定

キーコードを調査するために使ったページを置いておく。
ms-soft.jp

この設定で 1 週間使ってみたが、とりあえずはなんともなさそう。

2.5 昔前のギターを大改修したメモ

1999 年購入の K-Garage の ST タイプの安ギターをそろそろいじりたくなったのだ。2010 年以来の改造であり、その内容をメモしておくものである。

前回の改造当時の姿

厳密にはその後ストリングリテーナの交換が 2022 年に行われている。

電気パーツは消耗品なので、それらの全交換を兼ねての大改修である。改造内容としては、

  • 導電塗料を塗る
  • ブリッジを Wilkinson WOV01 に交換する
    • サドルを Musiclily のブロックタイプのものに交換する
  • ピックガードを Musiclily Pro のもの交換する
    • ピックアップを FLEOR のシングルサイズハムバッカー 3 発に交換する
    • ポットとスイッチを交換する
  • ジャックプレートを MONTREUX のフラットなものに交換する
    • ジャックを Switchcraft から Pure Tone に交換する
  • ネジをステンレス製に交換する

といった具合である。

ボディの改修

ギターワークスの導電塗料をメインのザグリとジャックのザグリに塗った。

50 cc 入りだが、なんとなくの 3 度塗りで半分くらい使ったかな。新しいピックガードにはザグリをすべて覆うようにアルミテープが貼られているため、そこと接触するようにボディ上部にはみ出すように塗った。また、ジャックプレートをフラットなものに交換することでプラグやジャックがザグリに不用意に触れることはないはずなので、ザグリ全面に塗り、同様にジャックプレートに接触するようにボディ上部にはみ出させた。

導電塗料を塗布した

塗りムラのせいか抵抗値は箇所によってばらつきがあり、100 Ω ないところもあればもっとあるところもあるが、その程度なら関係なし。

ピックガードを新調するにあたり、そのネジ穴の位置が従来とは異なるため、約 2.5 mm 径の竹串の先端を落としたもの差し込んで古い穴を埋めた。接着には木工用ボンドを用いた。そもそもオリジナルのネジ穴がピックガードの穴とずれている上に斜めになっていたのだが。竹串の頭はプラモ用ニッパでギリギリで切断したのちにデザインナイフでできる限りツライチになるように削り取った。ピックガードが変に浮くと接触不良のおそれがあるので。

また、ブリッジを新調するにあたり、その分厚いイナーシャブロックがボディトップのネック側の低音弦側に干渉したため、当該ザグリを 1 mm 程度やすりで削った。もともと斜めに掘ってあったっぽい。ボディエンド側も塗装後に削った跡があったが、そういうクオリティのものである。

ザグリを削った

そうして改修を終えたボディがこんな感じ。

改修したボディ全体

ピックガードの改修

ここ数年の中華ギターパーツの雄 Musiclily より、Musiclily Pro のフェンジャパ 57 ストラト用のピックガードを用意した。ken ちゃんモデルのコピーモデルゆえにラージヘッドなのに、オリジナルのピックガードが 8 穴なのでそれに倣った。

このギターは 22 フレット仕様であるが、ピックガードは 21 フレット仕様向けであるため、ピックガードのネックポケット部を数 mm ブリッジ側に削る必要があった。


これは古いピックガードをテンプレートにしてミニ四駆の肉抜きよろしく手動で穴を開けまくり、紙やすりで雑に整えて終わり。どうせ指板のツバで隠れる部分なので。

ブリッジの改造と装着

分厚いイナーシャブロックで安ギター改造に定評がある、Musiclily 扱いの Wilkinson m シリーズより Wilkinson WOV01 を装着した。

guitar-ijiri.com
このとき、ブリッジプレートにブロックを装着するネジをステンレス製に交換した。M4×10 の皿小ネジをチョイス。また、デフォルトのサドルがビンテージ風味のプレスタイプで、これは好みでないので、またもや Musiclily のブロックタイプのものを装着した。そして、イモネジが上からはみ出すのは好みではないのでステンレス製の M3×6 に交換し、オクターブ調整用ネジおよびスプリングも YJB PARTS のステンレス製にした。また、ブリッジ取り付け用のネジは通常は丸頭の木ネジを用いるのだが、その意図が不明なので入手性もあって皿頭のステンレス製木ネジを使ってみた。3.5×25 のものをチョイス。皿頭の木ネジを使っている先人を確認できたが、アーミングにおいてメリットがあるようだ。僕はアームを使わないけれど。

なお、トレモロスプリングとその受けは面倒だったのでオリジナルのものを流用した。今後に期待。

ブリッジを装着した

電装系の実装

中華ピックアップにおいて近年非常に定評のある FLEOR のピックアップをチョイス。せっかくなのでレールタイプのシングルサイズハムバッカーにしてみた。マグネットがセラミック版とアルニコ 5 版があるのだが、今回はセラミックをチョイス。フロント、センター、リアにそれぞれ対応品があって、直流抵抗がそれぞれ 6-7 kΩ、9-10 kΩ、12-13 kΩ という設定になっており、現物もその範囲に収まるものだった。今までは黒いピックアップカバーを 3 箇所に付けていたのだが、フロントから黒・白・黒という謎配色にしてみた。

取り付けネジは例によってステンレス製の皿小ネジ M3×20 を使用し、スプリングは付属品を使用した。

公式のインチキ配線図があるが、この公式推奨の定数に従って、ボリュームポットは 500 kΩ の B カーブを、トーンポットは 500 kΩ の A カーブを選択。いずれも SCUD 扱いの ALPHA 製。直径 24 mm のタイプはザグリに干渉することが前回の改造でわかっていたので 16 mm のタイプ。トーン用のキャパシタ(強いていえばカピャシタであろう*1)は手持ちのフィルムコンデンサ 0.047 μF (473) を使用。

また、レバースイッチは SCUD 扱いの ALPHA 製を。これの取り付け用にステンレス製の皿小ネジ M3×15 を使用。

そしてコイルタップスイッチには Nidec の DPDT であるトグルスイッチ 8J2011-Z をば。フジソク印の棒が短いタイプ。
www.nidec-components.com

というわけで、コントロールはマスタボリューム・マスタトーンで、全ピックアップについて連動するタップスイッチ付きという仕様にした。また、コイルタップ時にはフロントとリアにおいてはネック側のコイルが、センターはブリッジ側のコイルが選択されるようにし、ハーフトーン時にハムキャンセルされるようにしてある。購入品を用いて調査した結果、どのポジション向けのピックアップもマグネットの磁極の向きとコイル巻き方とリード線の関係は同じだったので。公式の配線図は現時点で誤っていると思う。

FLEOR シングルサイズハムの初期配線

この図では上のコイルがネック側、下のコイルがブリッジ側に相当する。

これをもとに作成した今回の配線の全体の回路図も置いておくが、コイルタップ時・非コイルタップ時で各ピックアップの GND は共通で、コイルタップ時には GND に近いほうの☆印のコイルが有効になり、もう片方のコイルは宙ぶらりんになるタイプの配線。

FLEOR シングルサイズハム 3 発を用いた回路図
ピックガード裏の配線

このピックアップ切り替え部は今は亡き DGB Studio の 3H19 を参考にした。

センターピックアップのタップ線はタップスイッチ経由でレバースイッチに向かうのがミソ。コイルタップ時にのみタップ線とレバースイッチの端子が短絡するようにし、非コイルタップ時にミックスポジションでタップ線同士が短絡されてブリッジ回路ができてしまうのを避ける。つまり「コイルタップ時に有効になるコイル同士の並列」と「無効になるコイル同士の並列」の直列になってしまうのは望んでいない。ただ、その音も気になるので今後試してみようかと思いつつ、よくある 2 ハム仕様のギターでの例の見たことがないのでクソなのか。

非コイルタップ時のミックスポジションでのあるべき回路(概略)

なお、ポット裏に GND のはんだ付けをするのが非常に苦手であるので、ラグ板の端子をスズメッキ線で短絡しておいてそれに各 GND に落とす線をはんだ付けし、取り付け用の穴にレバースイッチのネジを挿入し、ナットで固定するという非常に斬新な配線を行ったこともあり、配線が 3 次元的に複雑である。また、ナットが緩んだら接触不良待ったなしであるが、その前にスイッチが経年劣化で接触不良になると思いたいところ。

ラグ板の周辺

さらに出力ジャックは接触不良になりにくいらしい Pure Tone のモノラルジャック PPT1 を使用した。

組み込み

ピックガードおよびジャックプレートの装着には例によってステンレスの丸皿タッピングネジ 3×12 を用いた。ピックガード固定用のネジ穴はすべて開け直したが、2.0 mm のドリルでちょうどよい具合だった。

ピックアップ周辺

他の楽器との兼ね合いで L 型プラグを常用している都合上、舟型ジャックプレートではプラグを抜きにくい問題があったので、MONTREUX のフラットなタイプのジャックプレートを装着してみた。
www.montreuxguitars.com
ジャック付属のナットが 2 枚に変わったらしいのと、手持ちの薄い菊ワッシャを噛ませたこともあり、発売当初は懸念されていたジャックの出っ張りはとくに気にならない程度だった。

ジャックプレート周辺

ノブ類は従来品の流用である。

改造完了後の姿

改造後の全体像

遠目から見るとフロントとリアのシングル 2 発っぽく見えるか。

購入品リスト

モノ 値段 どこで
導電塗料 2079 Amazon
ピックガード 1469 Amazon
ブリッジ一式 2684 Amazon
サドル一式 789 Amazon
フロントピックアップ 1391 Amazon
センターピックアップ 1391 Amazon
リアピックアップ 1999 Amazon
レバースイッチ 581 Amazon
トグルスイッチ 480 千石電商
ボリュームポット 440 Amazon
トーンポット 351 Amazon
ジャック 700 Amazon
ラグ板 160 千石電商
スズメッキ線 275 千石電商
ジャックプレート 1890 千石電商
ピックガード固定ネジ 40 本入り 990 Amazon
ブリッジ固定ネジ約 12 本入り 228 コメリ
イナーシャブロック固定ネジ 4 本入り 93 ムサシ
サドル用イモネジ×12 660 千石電商
オクターブ調整ネジ一式 990 Amazon
ピックアップ固定ネジ 4 本入り×2 187 ムサシ
レバースイッチ固定ネジ(ナット・ワッシャ付き)7 本入り 348 コメリ
ポット用菊ワッシャ 4 枚入り 168 コメリ
20343

導電塗料や袋入りで買ったネジ類は全部使ったわけではないけど、増備した工具類や消耗品の分を加えてもこの程度だろう。

雑多な感想

予算を定めずに始めた企画であって、この記事を書きながら総額を計算してヒエーとなっている次第である。中華パーツを駆使して改造費用は抑えつつも、改造金額が本体金額を超えている気がしないでもない。ギター本体がいくらだったかは記憶にないが。これは改造素体のつもりで先日ハードオフで入手した 4400 円ジャンク扱いの Legend のギターを派手に改造する予行演習として進めた企画でもある。


だが、2 本改造する費用でもうちょっといいギターが買えるぞというアレ。そもそも YouTube でギター改造動画を見まくったせいで改造したい欲が抑えられなくなって始めたことなのでそれでは本末転倒だ。具体的な改造プランを決めるの策定にあたっては、シングルサイズハムバッカーを試したい欲とコイルタップがどんなもんか試したい欲とシングルコイル使いづらいしコイルタップは不要だろ感とセンターピックアップは飾りだしダミーでいいだろ感とが入り交じった、結果的に不要になるであろう機能でも大は小を兼ねる理論を原則とした。

また、今回の改造で手を付けなかったネック周辺の改造もしたいが、ナットとフレットは DIY する腕がないので、可能な範囲内で優先すべきはショボすぎるいわゆる亀ペグを交換することだろう。次いでネックジョイントのネジのステンレス化か。

近視と老眼のコンボでメガネをしていると手元が見えにくい体質のため、ほぼすべての作業は裸眼で進めたが、保護メガネくらいは持っておかないと危険だと感じている。

*1:その昔使っていた電気回路の教科書の珍記述より

モンキーハンティングと運動量保存則

高校物理の定番問題であるモンキーハンティングであるが、弾がサルに当たることを確認したところで問題は終わってしまうので、2 質点のモンキーハンティングを考え、運動量保存則から衝突後の運動まで考えてみることにした。「困難は分割せよ」の言葉を胸に。

1 次元の運動量保存則

直線上を運動する質量 $m_1, m_2$ の 2 つの質点が衝突する。衝突直前のそれぞれの速度が $\vb*{v}_1,\vb*{v}_2$ であり、反発係数が $e$ であるとき、衝突直後のそれぞれの速度 $\vb*{v}'_1,\vb*{v}'_2$ はどうなるか。

1 次元の運動量保存則

運動量保存則および反発係数の関係から、\begin{empheq}[left=\empheqlbrace]{align}
& m_1 \vb*{v}_1 + m_2 \vb*{v}_2 = m_1 \vb*{v}'_1 + m_2 \vb*{v}'_2 \\
& \vb*{v}'_1 - \vb*{v}'_2 = -e (\vb*{v}_1 - \vb*{v}_2)
\end{empheq}が成り立つ。これらより、
\begin{empheq}[left=\empheqlbrace]{align}
\vb*{v}'_1 &= \frac{1}{m_1 + m_2} \qty{ (m_1 - em_2) \vb*{v}_1 + (e+1) m_2 \vb*{v}_2 } \\
\vb*{v}'_2 &= \frac{1}{m_1 + m_2} \qty{ (e+1) m_1 \vb*{v}_1 + (m_2 - em_1) \vb*{v}_2 }
\end{empheq}となる。

2 次元の運動量保存則

平面上を運動する質量 $m_1, m_2$ の 2 つの質点が衝突する。衝突直前のそれぞれの速度が $\vb*{v}_1,\vb*{v}_2$ であり、反発係数が $e$ であるとき、衝突直後のそれぞれの速度 $\vb*{v}'_1,\vb*{v}'_2$ はどうなるか。

2 次元の運動量保存則

前述の 1 次元の運動量保存則を適用するため、適当な軸を設定する必要がある。

時刻 $t$ における 2 質点の位置ベクトルをそれぞれ $\vb*{r}_1(t),\vb*{r}_2(t)$ とする。後者から見た前者の相対位置 $\vb*{r}(t)$ は\[
\vb*{r}(t) \triangleq \vb*{r}_1(t) - \vb*{r}_2(t)
\]となるから、同様に相対速度 $\dot{\vb*{r}}(t)$ は\[
\dot{\vb*{r}}(t) = \dot{\vb*{r}_1}(t) - \dot{\vb*{r}_2}(t)
\]となるから、微小な $\varepsilon$ を用いて\[
\vb*{r}(t - \varepsilon) \approx \vb*{r}(t) - \dot{\vb*{r}}(t) \varepsilon
\]と線型近似できる。ここで、衝突直前の相対位置ベクトルに平行な単位ベクトル $\vb*{e}_Y$ を\begin{align}
\vb*{e}_Y
&\triangleq -\lim_{ \varepsilon \to +0} \frac{\vb*{r}(t_c - \varepsilon)}{\norm{ \vb*{r}(t_c - \varepsilon) }} \\
&=\frac{\vb*{v}_1 - \vb*{v}_2}{\norm{\vb*{v}_1 - \vb*{v}_2}}
\end{align}と定義し、$\vb*{e}_X$ をこれに垂直な単位ベクトルと定義する。このとき衝突前後の速度ベクトルの $\vb*{e}_Y$ 方向成分にのみ反発係数が寄与するが、これが 2 質点の相対速度の方向であることがわかる。

したがって、運動量保存則および反発係数の関係から、\begin{empheq}[left=\empheqlbrace]{align}
& m_1 \vb*{v}_1 + m_2 \vb*{v}_2 = m_1 \vb*{v}'_1 + m_2 \vb*{v}'_2 \\
& (\vb*{v}'_1 - \vb*{v}'_2) \cdot \vb*{e}_Y = -e (\vb*{v}_1 - \vb*{v}_2) \cdot \vb*{e}_Y
\end{empheq}が成り立つ。とくに、$\vb*{e}_Y$ 方向については 1 次元の運動量保存則が適用でき、\begin{empheq}[left=\empheqlbrace]{align}
\vb*{v}'_1 \cdot \vb*{e}_Y &= \frac{1}{m_1 + m_2} \qty{ (m_1 - em_2) \vb*{v}_1 + (e+1) m_2 \vb*{v}_2 } \cdot \vb*{e}_Y \\
\vb*{v}'_2 \cdot \vb*{e}_Y &= \frac{1}{m_1 + m_2} \qty{ (e+1) m_1 \vb*{v}_1 + (m_2 - em_1) \vb*{v}_2 } \cdot \vb*{e}_Y
\end{empheq}となり、速度の $\vb*{e}_X$ 方向成分は衝突前後で変化しないから、これらをまとめて、\begin{empheq}[left=\empheqlbrace]{align}
\vb*{v}'_1 &= ( \vb*{v}_1 \cdot \vb*{e}_X ) \vb*{e}_X + \frac{1}{m_1 + m_2} \qty( \qty{ (m_1 - em_2) \vb*{v}_1 + (e+1) m_2 \vb*{v}_2 } \cdot \vb*{e}_Y ) \vb*{e}_Y \\
\vb*{v}'_2 &= ( \vb*{v}_2 \cdot \vb*{e}_X ) \vb*{e}_X + \frac{1}{m_1 + m_2} \qty( \qty{ (e+1) m_1 \vb*{v}_1 + (m_2 - em_1) \vb*{v}_2 } \cdot \vb*{e}_Y ) \vb*{e}_Y
\end{empheq}となる。

モンキーハンティング

時刻 $t=0$ において、質量 $m_1$ の質点を原点から初速度 $\vb*{v}_0$ で斜方投射し、質量 $m_2$ の質点の位置ベクトルは $\vb*{v}_0 t_c$ であり、ここから自由落下する。ここで、$t_c$ は適当な正の定数であり、重力加速度は $g$ とする。

モンキーハンティング

時刻 $t$ における両質点の位置ベクトルをそれぞれ $\vb*{r}_1(t),\vb*{r}_2(t)$ とおく。また、水平方向および鉛直方向の単位ベクトルをそれぞれ $\vb*{e}_x,\vb*{e}_y$ とする。このとき、各質点の位置および速度は
\begin{empheq}[left=\empheqlbrace]{align}
\vb*{r}_1(t) &= \vb*{v}_0 t - \frac{1}{2} gt^2 \vb*{e}_y \\
\vb*{r}_2(t) &= \vb*{v}_0 t_c - \frac{1}{2} gt^2 \vb*{e}_y \\
\dot{\vb*{r}_1}(t) &= \vb*{v}_0 - gt \vb*{e}_y \\
\dot{\vb*{r}_2}(t) &= -gt \vb*{e}_y
\end{empheq}となる。

衝突の時刻は $\vb*{r}_1(t) = \vb*{r}_2(t)$ より $t = t_c$ であるから、衝突の直前の位置と速度は、\begin{empheq}[left=\empheqlbrace]{align}
\vb*{r}_1(t_c) &= \vb*{r}_2(t_c) = \vb*{v}_0 t_c - \frac{1}{2} g t_c^2 \vb*{e}_y \\
\dot{\vb*{r}_1}(t_c) &= \vb*{v}_0 - g t_c \vb*{e}_y \\
\dot{\vb*{r}_2}(t_c) &= -g t_c \vb*{e}_y
\end{empheq}と表せる。

モンキーハンティングと運動量保存則

モンキーハンティングでの衝突直後の各質点の速度 $\vb*{v}'_1, \vb*{v}'_2$ を求めるため、衝突がきわめて短い時間で行われるとみなして 2 次元の運動量保存則を適用したい。

各軸を求める。定義より、\begin{align}
\vb*{e}_Y
&= \frac{\dot{\vb*{r}_1}(t_c) - \dot{\vb*{r}_2}(t_c)}{ \norm{\dot{\vb*{r}_1}(t_c) - \dot{\vb*{r}_2}(t_c)} } \\
&= \frac{\vb*{v}_0}{ \norm{\vb*{v}_0} }
\end{align}であって、$\vb*{e}_X$ をこれに垂直な単位ベクトルとする。

さて、2 次元の運動量保存則より、衝突直後の質量 $m_1$ の質点の速度 $\vb*{v}'_1$ は
\begin{align}
\vb*{v}'_1
&= ( \dot{\vb*{r}_1}(t_c) \cdot \vb*{e}_X ) \vb*{e}_X + \frac{1}{m_1 + m_2} \qty( \qty{ (m_1 - em_2) \dot{\vb*{r}_1}(t_c) + (e+1) m_2 \dot{\vb*{r}_2}(t_c) } \cdot \vb*{e}_Y ) \vb*{e}_Y \\
&= \qty{ (\vb*{v}_0 - g t_c \vb*{e}_y) \cdot \vb*{e}_X } \vb*{e}_X + \frac{1}{m_1 + m_2} \qty( \qty{ (m_1 - em_2) (\vb*{v}_0 - g t_c \vb*{e}_y) - (e+1) m_2 g t_c \vb*{e}_y } \cdot \vb*{e}_Y ) \vb*{e}_Y \\
&= - g t_c \qty{ ( \vb*{e}_y \cdot \vb*{e}_X ) \vb*{e}_X + (\vb*{e}_y \cdot \vb*{e}_Y ) \vb*{e}_Y } + \frac{m_1 - e m_2}{m_1 + m_2} ( \vb*{v}_0 \cdot \vb*{e}_Y ) \vb*{e}_Y \\
&= \frac{m_1 - e m_2}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 - g t_c \vb*{e}_y \\
&= \dot{\vb*{r}_1}(t_c) - \frac{(e+1) m_2}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0
\end{align}となる。また、衝突直後の質量 $m_2$ の質点の速度 $\vb*{v}'_2$ は、\begin{align}
\vb*{v}'_2
&= \frac{m_1}{m_2} (\dot{\vb*{r}_1}(t_c) - \vb*{v}'_1)+ \dot{\vb*{r}_2}(t_c) \\
&= \frac{m_1}{m_2} \cdot \frac{(e+1) m_2}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 - g t_c \vb*{e}_y \\
&= \frac{(e+1) m_1}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 - g t_c \vb*{e}_y
\end{align}である。

モンキーハンティング、その後の運動

これまでの議論より、モンキーハンティング後の運動は衝突時刻において衝突位置から $\vb*{v}'_1,\vb*{v}'_2$ で斜方投射される質点の運動として求められる。

モンキーハンティング後の運動

$t > t_c$ において、各質点の速度は\begin{empheq}[left=\empheqlbrace]{align}
\dot{\vb*{r}_1}(t)
&= \vb*{v}'_1 - g (t-t_c) \vb*{e}_y \\
&= \frac{m_1 - e m_2}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 - g t_c \vb*{e}_y - g (t-t_c) \vb*{e}_y \\
&= \frac{m_1 - e m_2}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 - g t \vb*{e}_y \\
\dot{\vb*{r}_2}(t)
&= \vb*{v}'_2 - g (t-t_c) \vb*{e}_y \\
&= \frac{(e+1) m_1}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 - g t_c \vb*{e}_y - g (t-t_c) \vb*{e}_y \\
&= \frac{(e+1) m_1}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 - g t \vb*{e}_y
\end{empheq}となり、位置ベクトルは\begin{empheq}[left=\empheqlbrace]{align}
\vb*{r}_1(t)
&= \vb*{r}_1(t_c) + \int_{t_c}^t \dot{\vb*{r}_1}(\tau) \dd{\tau} \\
&= \vb*{v}_0 t_c - \frac{1}{2} g t_c^2 \vb*{e}_y + \frac{m_1 - e m_2}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 (t - t_c) - \frac{1}{2} g (t^2 - t_c^2) \vb*{e}_y \\
&= \frac{(e+1) m_2}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 t_c + \frac{m_1 - e m_2}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 t - \frac{1}{2} g t^2 \vb*{e}_y \\
\vb*{r}_2(t)
&= \vb*{r}_2(t_c) + \int_{t_c}^t \dot{\vb*{r}_2}(\tau) \dd{\tau} \\
&= \vb*{v}_0 t_c - \frac{1}{2} g t_c^2 \vb*{e}_y + \frac{(e+1) m_1}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 (t - t_c) - \frac{1}{2} g (t^2 - t_c^2) \vb*{e}_y \\
&= \vb*{v}_0 t_c + \frac{(e+1) m_1}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 (t - t_c) - \frac{1}{2} g t^2 \vb*{e}_y \\
&= \frac{m_2 - e m_1}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 t_c + \frac{(e+1) m_1}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 t - \frac{1}{2} g t^2 \vb*{e}_y
\end{empheq}となる。

全体の運動

以上をまとめると、$0 \leq t \leq t_c$ において、
\begin{empheq}[left=\empheqlbrace]{align}
\vb*{r}_1(t) &= \vb*{v}_0 t - \frac{1}{2} gt^2 \vb*{e}_y \\
\vb*{r}_2(t) &= \vb*{v}_0 t_c - \frac{1}{2} gt^2 \vb*{e}_y \\
\dot{\vb*{r}_1}(t) &= \vb*{v}_0 - gt \vb*{e}_y \\
\dot{\vb*{r}_2}(t) &= -gt \vb*{e}_y
\end{empheq}であり、$t > t_c$ において、
\begin{empheq}[left=\empheqlbrace]{align}
\vb*{r}_1(t)
&= \frac{(e+1) m_2}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 t_c + \frac{m_1 - e m_2}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 t - \frac{1}{2} g t^2 \vb*{e}_y \\
\vb*{r}_2(t)
&= \frac{m_2 - e m_1}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 t_c + \frac{(e+1) m_1}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 t - \frac{1}{2} g t^2 \vb*{e}_y \\
\dot{\vb*{r}_1}(t)
&= \frac{m_1 - e m_2}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 - g t \vb*{e}_y \\
\dot{\vb*{r}_2}(t)
&= \frac{(e+1) m_1}{m_1 + m_2} \vb*{v}_0 - g t \vb*{e}_y
\end{empheq}である。

モンキーハンティング前後の質点の軌跡の例

ベクトルを成分表示して行列で基底をすげ替えて、みたいなほうが好きなんだけども、今回は三角関数の登場を避けるべく正射影ベクトルを駆使して抽象度を上げる(?)スタイルに挑んだ。力学用の筋肉の再構築には必要なのかもしれない。

みんな大好き金沢工業大のページで、大きさを持つ小球でのシミュレーションができる。
w3e.kanazawa-it.ac.jp