面白そうな数え上げ問題をたまたま発見したので。
問題
元の問題
東北大学 2014 年・後期 (理学部・問 4 および経済学部・問 3)より。
縦横の長さの比が $1:3$ の長方形の板がある。この板を両面とも下図のように線で区切り、できた $6$ つの正方形のそれぞれに赤または白の色を塗ることにする。塗り終えた板において回転や裏返しで同じ塗り方になるものは区別しないとするとき、塗り方は何通りあるか求めよ。ただし、各正方形には $1$ つの色を塗るものとする。
東北大学 - PukiWiki
縦が $2$、横が $3$ の格子の塗り方として考えるとよさそうな問題である。
同値な問題を激しく一般化
$m,n$ を非負整数、$k$ を正整数とし、縦に $m$ 個ずつ、横に $n$ 個ずつ合同な正方形のマスを並べる。マスを並べたものを盤面と呼び、盤面にできた $mn$ 個のマスのそれぞれに $k$ 色のうちのいずれかの色を塗ることにする。塗り終えた盤面において $180\degree$ 回転や上下・左右の鏡映で同じ塗り方になるものは区別しないとするとき、塗り方は何通りあるか求めよ。ただし、各マスには $1$ つの色を塗るものとする。
準備
対称性
元の問題のテーマでもある対称性。
盤面の塗り方の持つ対称性を考えると、
- 左右対称
- 上下対称
- $180\degree$ 回転対称
- 対称性なし
がある。
座標平面で考える
$i,j$ を非負整数とする。$xy$ 平面上の $\abs{x} \leq j$ かつ $\abs{y} \leq i$ を満たす $(2i+1)(2j+1)$ 個の格子点のそれぞれに $k$ 色のうちのいずれかの色を割り当てることにする。これで盤面上のマスと格子点を対応づけることにする。
そしてそれら格子点たちのうち第 $a$ 象限にあるものたちの集合を $Q_a$ と書くことにする。
ここで、$\qty{ ( (x_a,y_a), (x_a,y_a)) \in Q_a \times Q_b \mid \abs{x_a}=\abs{x_b} \land \abs{y_a}=\abs{y_b} }$ の元である任意の格子点の組についてそれぞれの色が同じであるとき $Q_a \cong Q_b$ と書き、そうでないとき $Q_a \ncong Q_b$ と書くことにする。
解法 1(高校レベルの泥臭い方法)
塗り方の持つ対称性について、実際は先述の $4$ 種類のうちいくつかを兼ね備えているものもあることを考慮すると、各塗り方の持つ対称性は次の 5 つに過不足なく分類でき、アルファベット大文字の対称性になぞらえてそれぞれにパターン名を付与することにする。
- 左右対称のみ(パターン A)
- 上下対称のみ(パターン B)
- $180\degree$ 回転対称のみ(パターン N)
- 左右対称かつ上下対称かつ $180\degree$ 回転対称(パターン H)
- 対称性なし(パターン F)
軸上の格子点の対称性パターン
軸上の格子点の塗り方の場合の数を考えるが、$m,n$ の偶奇によって特定の軸上の格子点の塗り方を同一視する(特定の $1$ 色で塗る)ことで、それ以外の軸と各象限が盤面に対応する。各軸についての鏡映、原点まわりの $180\degree$ 回転で重なるものたちは同一視する。また、$P(a,b)=a!/(a-b)!$ である。
次の模式図もともに示すが、十字部分を各軸、角の部分を各象限と思ってほしい。

$m=2i$ かつ $n=2j$ のとき
軸上の格子点は特定の $1$ 色ですべて塗る。
- パターン H の塗り方は $1$ 通り

$m=2i$ かつ $n=2j+1$ のとき
$y$ 軸上の格子点の塗り方は原点を除いて任意。$x$ 軸上の格子点は特定の $1$ 色ですべて塗る。
- パターン A の塗り方は $k^i (k^i-1)/2$ 通り
- $y>0$ 部分、$y<0$ 部分の塗り方の順序組の選び方は $P(k^i,2)$ 通り
- $x$ 軸についての鏡映で重なるものたちを同一視
- パターン H の塗り方は $k^i$ 通り
- $y>0$ 部分の塗り方は $k^i$ 通り


$m=2i+1$ かつ $n=2j$ のとき
$x$ 軸上の格子点の塗り方は原点を除いて任意。$y$ 軸上の格子点は特定の $1$ 色ですべて塗る。
- パターン B の塗り方は $k^j (k^j-1)/2$ 通り
- $x>0$ 部分、$x<0$ 部分の塗り方の順序組の選び方は $P(k^j,2)$ 通り
- $y$ 軸についての鏡映で重なるものたちを同一視
- パターン H の塗り方は $k^j$ 通り
- $x>0$ 部分の塗り方は $k^j$ 通り


$m=2i+1$ かつ $n=2j+1$ のとき
軸上の格子点の塗り方は任意。
- パターン A の塗り方は $k^{i+j+1} (k^i-1)/2$ 通り
- $y>0$ 部分、$y<0$ 部分の塗り方の順序組の選び方は $P(k^i,2)$ 通り
- $x \geq 0$ 部分の塗り方は $k^{j+1}$ 通り
- $x$ 軸についての鏡映で重なるものたちを同一視
- パターン B の塗り方は $k^{i+j+1} (k^j-1)/2$ 通り
- $x>0$ 部分、$x<0$ 部分の塗り方の順序組の選び方は $P(k^j,2)$ 通り
- $y \geq 0$ 部分の塗り方は $k^{i+1}$ 通り
- $y$ 軸についての鏡映で重なるものたちを同一視
- パターン H の塗り方は $k^{i+j+1}$ 通り
- $x>0$ 部分の塗り方は $k^j$ 通り
- $y>0$ 部分の塗り方は $k^i$ 通り
- 原点の塗り方は $k$ 通り
- パターン F の塗り方は $k^{i+j+1} (k^i-1) (k^j-1) /4$ 通り
- $x>0$ 部分、$x<0$ 部分の塗り方の順序組の選び方は $P(k^j,2)$ 通り
- $y>0$ 部分、$y<0$ 部分の塗り方の順序組の選び方は $P(k^i,2)$ 通り
- 原点の塗り方は $k$ 通り
- 各軸についての鏡映、原点まわりの $180\degree$ 回転で重なるものたちを同一視




各象限の格子点も塗る
軸上の格子点の塗り方が上記の各パターンである場合に各象限の格子点も塗ったときに得られる盤面がどのパターンになり、その塗り方の場合の数はどうかを考える。各軸についての鏡映、原点まわりの $180\degree$ 回転で重なるものたちは同一視する。
軸上の格子点の塗り方がパターン A のとき
- パターン A になる塗り方は $k^{2ij}$ 通り
- $Q_1 \cong Q_2$ かつ $Q_3 \cong Q_4$ であるとき、$k^{2ij}$ 通り
- $Q_1$ の塗り方は $k^{ij}$ 通り
- $Q_3$ の塗り方は $k^{ij}$ 通り
- $Q_1 \cong Q_2$ かつ $Q_3 \cong Q_4$ であるとき、$k^{2ij}$ 通り
- パターン F になる塗り方は以下の 3 つの場合の数の和で $k^{2ij} (k^{2ij}-1)/2$ 通り
- $Q_1 \cong Q_2$ かつ $Q_3 \ncong Q_4$ であるとき、$P(k^{ij},2) k^{ij} /2$ 通り
- $Q_1$ の塗り方は $k^{ij}$ 通り
- $Q_3, Q_4$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},2)$ 通り
- $y$ 軸についての鏡映で重なるものたちを同一視
- $Q_1 \ncong Q_2$ かつ $Q_3 \cong Q_4$ であるとき、$P(k^{ij},2) k^{ij} /2$ 通り
- $Q_1, Q_2$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},2)$ 通り
- $Q_3$ の塗り方は $k^{ij}$ 通り
- $y$ 軸についての鏡映で重なるものたちを同一視
- $Q_1 \ncong Q_2$ かつ $Q_3 \ncong Q_4$ であるとき、$P(k^{ij},2)^2 /2$ 通り
- $Q_1, Q_2$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},2)$ 通り
- $Q_3, Q_4$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},2)$ 通り
- $y$ 軸についての鏡映で重なるものたちを同一視
- $Q_1 \cong Q_2$ かつ $Q_3 \ncong Q_4$ であるとき、$P(k^{ij},2) k^{ij} /2$ 通り




軸上の格子点の塗り方がパターン B のとき
- パターン B になる塗り方は $k^{2ij}$ 通り
- $Q_1 \cong Q_4$ かつ $Q_2 \cong Q_3$ であるとき、$k^{2ij}$ 通り
- $Q_1$ の塗り方は $k^{ij}$ 通り
- $Q_2$ の塗り方は $k^{ij}$ 通り
- $Q_1 \cong Q_4$ かつ $Q_2 \cong Q_3$ であるとき、$k^{2ij}$ 通り
- パターン F になる塗り方は以下の 3 つの場合の数の和で $k^{2ij} (k^{2ij}-1)/2$ 通り
- $Q_1 \cong Q_4$ かつ $Q_2 \ncong Q_3$ であるとき、$P(k^{ij},2) k^{ij} /2$ 通り
- $Q_1$ の塗り方は $k^{ij}$ 通り
- $Q_2, Q_3$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},2)$ 通り
- $x$ 軸についての鏡映で重なるものたちを同一視
- $Q_1 \ncong Q_4$ かつ $Q_2 \cong Q_3$ であるとき、$P(k^{ij},2) k^{ij} /2$ 通り
- $Q_1, Q_4$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},2)$ 通り
- $Q_2$ の塗り方は $k^{ij}$ 通り
- $x$ 軸についての鏡映で重なるものたちを同一視
- $Q_1 \ncong Q_4$ かつ $Q_2 \ncong Q_3$ であるとき、$P(k^{ij},2)^2 /2$ 通り
- $Q_1, Q_4$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},2)$ 通り
- $Q_2, Q_3$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},2)$ 通り
- $x$ 軸についての鏡映で重なるものたちを同一視
- $Q_1 \cong Q_4$ かつ $Q_2 \ncong Q_3$ であるとき、$P(k^{ij},2) k^{ij} /2$ 通り




軸上の格子点の塗り方がパターン H のとき
- パターン A になる塗り方は $k^{ij} (k^{ij}-1)/2$ 通り
- $Q_1 \cong Q_2$ かつ $Q_3 \cong Q_4$ かつ $Q_1 \ncong Q_3$ であるとき、$P(k^{ij},2)/2$ 通り
- $Q_1, Q_3$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},2)$ 通り
- $x$ 軸についての鏡映で重なるものたちを同一視
- $Q_1 \cong Q_2$ かつ $Q_3 \cong Q_4$ かつ $Q_1 \ncong Q_3$ であるとき、$P(k^{ij},2)/2$ 通り
- パターン B になる塗り方は $k^{ij} (k^{ij}-1)/2$ 通り
- $Q_1 \cong Q_4$ かつ $Q_2 \cong Q_3$ かつ $Q_1 \ncong Q_2$ であるとき、$P(k^{ij},2)/2$ 通り
- $Q_1, Q_2$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},2)$ 通り
- $y$ 軸についての鏡映で重なるものたちを同一視
- $Q_1 \cong Q_4$ かつ $Q_2 \cong Q_3$ かつ $Q_1 \ncong Q_2$ であるとき、$P(k^{ij},2)/2$ 通り
- パターン N になる塗り方は $k^{ij} (k^{ij}-1)/2$ 通り
- $Q_1 \cong Q_3$ かつ $Q_2 \cong Q_4$ かつ $Q_1 \ncong Q_2$ であるとき、$P(k^{ij},2)/2$ 通り
- $Q_1, Q_2$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},2)$ 通り
- どちらかの軸についての鏡映で重なるものたちを同一視
- $Q_1 \cong Q_3$ かつ $Q_2 \cong Q_4$ かつ $Q_1 \ncong Q_2$ であるとき、$P(k^{ij},2)/2$ 通り
- パターン H になる塗り方は $k^{ij}$ 通り
- $Q_1 \cong Q_2 \cong Q_3 \cong Q_4$ であるとき、$k^{ij}$ 通り
- $Q_1$ の塗り方は $k^{ij}$ 通り
- $Q_1 \cong Q_2 \cong Q_3 \cong Q_4$ であるとき、$k^{ij}$ 通り
- パターン F になる塗り方は以下の 5 つの場合の数の和で $k^{ij} (k^{ij}-1)^2 (k^{ij}+2)/4$ 通り。
- $Q_1 \cong Q_2 \cong Q_3$ かつ $Q_1 \ncong Q_4$ のとき、$P(k^{ij},2)$ 通り
- $Q_1, Q_4$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},2)$ 通り
- $Q_1 \cong Q_2$ かつ $Q_3 \ncong Q_4$ かつ $Q_1 \ncong Q_3$ かつ $Q_1 \ncong Q_4$ のとき、$P(k^{ij},3)/2$ 通り
- $Q_1, Q_3, Q_4$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},3)$ 通り
- $y$ 軸についての鏡映で重なるものたちを同一視
- $Q_1 \cong Q_4$ かつ $Q_2 \ncong Q_3$ かつ $Q_1 \ncong Q_2$ かつ $Q_1 \ncong Q_3$ のとき、$P(k^{ij},3)/2$ 通り
- $Q_1, Q_2, Q_4$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},3)$ 通り
- $x$ 軸についての鏡映で重なるものたちを同一視
- $Q_1 \cong Q_3$ かつ $Q_1 \ncong Q_2$ かつ $Q_1 \ncong Q_4$ かつ $Q_2 \ncong Q_4$ のとき、$P(k^{ij},3)/2$ 通り
- $Q_1, Q_2, Q_4$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},3)$ 通り
- 原点まわりの $180\degree$ 回転で重なるものたちを同一視
- $Q_1, Q_2, Q_3, Q_4$ の塗り方がすべて異なるとき、$P(k^{ij},4)/4$ 通り
- $Q_1, Q_2, Q_3, Q_4$ の塗り方の順序組の選び方は $P(k^{ij},4)$ 通り
- 各軸についての鏡映、原点まわりの $180\degree$ 回転で重なるものたちを同一視
- $Q_1 \cong Q_2 \cong Q_3$ かつ $Q_1 \ncong Q_4$ のとき、$P(k^{ij},2)$ 通り









軸上の格子点の塗り方がパターン F のとき
- パターン F になる塗り方は $k^{4ij}$ 通り
- $Q_1, Q_2, Q_3, Q_4$ の塗り方はいずれも任意で、$k^{4ij}$ 通り
- $Q_1$ の塗り方は $k^{ij}$ 通り
- $Q_1, Q_2, Q_3, Q_4$ の塗り方はいずれも任意で、$k^{4ij}$ 通り

個別の一般項
盤面の塗り方においてパターン A, B, N, H, F となる場合の数をそれぞれ $A_{m,n},B_{m,n},N_{m,n},H_{m,n},F_{m,n}$ とおく。ただし $180\degree$ 回転や上下・左右の鏡映で同じ塗り方になるものは区別しない。
非負整数 $i,j$ に対して行列 $M_{i,j}$ を\[
M_{i,j}= \mqty[
A_{2i,2j} & A_{2i,2j+1} & A_{2i+1,2j} & A_{2i+1,2j+1} \\
B_{2i,2j} & B_{2i,2j+1} & B_{2i+1,2j} & B_{2i+1,2j+1} \\
N_{2i,2j} & N_{2i,2j+1} & N_{2i+1,2j} & N_{2i+1,2j+1} \\
H_{2i,2j} & H_{2i,2j+1} & H_{2i+1,2j} & H_{2i+1,2j+1} \\
F_{2i,2j} & F_{2i,2j+1} & F_{2i+1,2j} & F_{2i+1,2j+1} ]
\]と定義する。
また、先述の議論により、軸上の格子点のパターン別の塗り方の場合の数を表す行列 $C_{i,j}$ を\[
C_{i,j}
= \mqty[
0 & k^i (k^i-1)/2 & 0 & k^{i+j+1} (k^i-1)/2 \\
0 & 0 & k^j (k^j-1)/2 & k^{i+j+1} (k^j-1)/2 \\
0 & 0 & 0 & 0 \\
1 & k^i & k^j & k^{i+j+1} \\
0 & 0 & 0 & k^{i+j+1} (k^i-1) (k^j-1) /4 ]
\]と定義し、軸上の格子点の各パターンから他の格子点の塗り方でどのパターンが何通り生まれるかを表す行列 $C'_{i,j}$ を\[
C'_{i,j} = \mqty[
k^{2ij} & 0 & 0 & k^{ij} (k^{ij}-1)/2 & 0 \\
0 & k^{2ij} & 0 & k^{ij} (k^{ij}-1)/2 & 0 \\
0 & 0 & 0 & k^{ij} (k^{ij}-1)/2 & 0 \\
0 & 0 & 0 & k^{ij} & 0 \\
k^{2ij} (k^{2ij}-1)/2 & k^{2ij} (k^{2ij}-1)/2 & 0 & k^{ij} (k^{ij}-1)^2 (k^{ij}+2)/4 & k^{4ij} ]
\]と定義すると、
\[
M_{i,j} = C'_{i,j} C_{i,j}
\]となる。
全体の一般項
行列 $W$ を\[
W=\mqty[1&1&1&1&1]
\]とおく。
縦が $m$、横が $n$ の盤面の塗り方の総数を $D_{m,n}$ とおくと、\[
\begin{align}
D_{m,n}
&= A_{m,n} + B_{m,n} + N_{m,n} + H_{m,n} + F_{m,n} \\
&= W \mqty[A_{m,n} \\ B_{m,n} \\ N_{m,n} \\ H_{m,n} \\ F_{m,n} ]
\end{align}
\]であるから、\[
\mqty[D_{2i,2j} & D_{2i,2j+1} & D_{2i+1,2j} & D_{2i+1,2j+1} ]
= W M_{i,j}
\]と表せる。ゆえに転置して、\[
\mqty[D_{2i,2j} \\ D_{2i,2j+1} \\ D_{2i+1,2j} \\ D_{2i+1,2j+1} ]
= \frac{k^{2ij}}{4} \mqty[k^{2ij} + 3 \\ (k^{2ij+i}+k^i+2) k^i \\ (k^{2ij+j}+k^j+2) k^j \\ (k^{2ij+i+j} + k^i+k^j+1) k^{i+j+1}]
\]となるから、$m,n$ の偶奇により、\[
D_{m,n}=
\begin{dcases}
\frac{k^{mn/2}}{4} (k^{mn/2} + 3) & (m=2i,n=2j) \\
\frac{k^{mn/2}}{4} (k^{mn/2}+k^{m/2}+2) & (m=2i,n=2j+1) \\
\frac{k^{mn/2}}{4} (k^{mn/2}+k^{n/2}+2) & (m=2i+1,n=2j) \\
\frac{k^{mn/2}}{4} (k^{mn/2} + k^{m/2}+k^{n/2}+k^{1/2}) & (m=2i+1,n=2j+1)
\end{dcases}\]となる。さらに、$(1-(-1)^a)/2$ は $a$ が偶数のとき $0$、奇数のとき $1$ となることを利用すると、$D_{m,n}$ は $m,n$ の偶奇によらず\[
\begin{align}
D_{m,n}
&=\frac{k^{mn/2}}{4} \qty(k^{mn/2} + \frac{1-(-1)^n}{2} (k^{m/2}-1) + \frac{1-(-1)^m}{2} (k^{n/2}-1)+\frac{1-(-1)^{mn}}{2} (k^{1/2}-1) + 3) \\
&=\frac{k^{mn/2}}{8} (2k^{mn/2} + (1-(-1)^n) (k^{m/2}-1) + (1-(-1)^m) (k^{n/2}-1)+(1-(-1)^{mn}) (k^{1/2}-1) + 6) \\
\end{align}
\]と統一的に表せる。
解法 2(Cauchy-Frobenius の定理)
格子点たちに対する
- 何もしない ($e$)
- $y$ 軸についての鏡映をとる ($m_y$)
- $x$ 軸についての鏡映をとる ($m_x$)
- 原点まわりに $180\degree$ 回転させる ($r$)
という変換を考えたとき、これらの集合 $G=\qty{e,m_y,m_x,r}$ は変換の合成を積として群となる(位数 $4$ の二面体群)。乗積表は次のとおり。
| $e$ | $m_y$ | $m_x$ | $r$ | |
|---|---|---|---|---|
| $e$ | $e$ | $m_y$ | $m_x$ | $r$ |
| $m_y$ | $m_y$ | $e$ | $r$ | $m_x$ |
| $m_x$ | $m_x$ | $r$ | $e$ | $m_y$ |
| $r$ | $r$ | $m_x$ | $m_y$ | $e$ |
$m,n$ の偶奇によって特定の軸上の格子点の塗り方を同一視する(特定の $1$ 色で塗る)ことで、それ以外の軸と各象限が盤面に対応する。解法 1 とは異なり、各軸についての鏡映、原点まわりの $180\degree$ 回転で重なるものたちは同一視せず、別の塗り方として扱う。そのようなすべての盤面の塗り方の集合を $X$ とおき、$G$ の $X$ への作用を考えたとき、各 $g \in G$ について $X^g=\qty{x \in X \mid gx=x}$ とする。
軸上の格子点
軸上の格子点は次の条件を満たすように塗る。
- $m=2i$ かつ $n=2j$ のとき軸上の格子点は特定の $1$ 色ですべて塗る。
- $m=2i$ かつ $n=2j+1$ のとき $y$ 軸上の格子点の塗り方は原点を除いて任意。$x$ 軸上の格子点は特定の $1$ 色ですべて塗る。
- $m=2i+1$ かつ $n=2j$ のとき $x$ 軸上の格子点の塗り方は原点を除いて任意。$y$ 軸上の格子点は特定の $1$ 色ですべて塗る。
- $m=2i+1$ かつ $n=2j+1$ のとき軸上の格子点の塗り方は任意。
全体の塗り方
すべての塗り方・左右対称な塗り方・上下対称な塗り方・$180\degree$ 回転対称な塗り方がそれぞれ $\abs{X^e}, \abs{X^{m_y}}, \abs{X^{m_x}}, \abs{X^r}$ 通りであって、それらを機械的に求める。
すべての塗り方
$k^{mn}$ 通り。
左右対称な塗り方
$y$ 軸上以外の格子点の塗り方で $x<0$ 部分と $x>0$ 部分の塗り方が $y$ 軸対称な塗り方は $k^{mj}$ 通り。全体として、
- $n=2j$ のとき $k^{mn/2}$ 通り
- $n=2j+1$ のとき $k^m k^{m(n-1)/2}=k^{m(n+1)/2}$ 通り
- $y$ 軸上の格子点の塗り方は $k^m$ 通り

上下対称な塗り方
同様に、
- $m=2i$ のとき $k^{mn/2}$ 通り
- $m=2i+1$ のとき $k^{(m+1)n/2}$ 通り
- $x$ 軸上の格子点の塗り方は $k^n$ 通り

$180\degree$ 回転対称な塗り方
軸上以外の格子点の塗り方で $Q_1 \cong Q_3$ かつ $Q_2 \ncong Q_4$ な塗り方は $k^{2ij}$ 通り。全体として、
- $m=2i$ かつ $n=2j$ のとき $k^{mn/2}$ 通り
- $m=2i$ かつ $n=2j+1$ のとき $k^{mn/2}$ 通り
- $y$ 軸上の格子点の塗り方は $k^{m/2}$ 通り
- $m=2i+1$ かつ $n=2j$ のとき $k^{mn/2}$ 通り
- $x$ 軸上の格子点の塗り方は $k^{n/2}$ 通り
- $m=2i+1$ かつ $n=2j+1$ のとき $k^{(mn+1)/2}$ 通り
- 軸上の格子点の塗り方は $k^{(m+n)/2}$ 通り

Cauchy-Frobenius の定理
縦が $m$、横が $n$ の盤面の塗り方の総数を $D_{m,n}$ とおくと、Cauchy-Frobenius の定理より、\[
\begin{align}
D_{m,n}&=\frac{1}{\abs{G}} \sum_{g \in G} \abs{X^g} \\
&=\begin{dcases}
\frac{1}{4} (k^{mn}+k^{mn/2}+k^{mn/2}+k^{mn/2}) & (m=2i,n=2j) \\
\frac{1}{4} (k^{mn}+k^{m(n+1)/2}+k^{mn/2}+k^{mn/2}) & (m=2i,n=2j+1) \\
\frac{1}{4} (k^{mn}+k^{mn/2}+k^{(m+1)n/2}+k^{mn/2}) & (m=2i+1,n=2j) \\
\frac{1}{4} (k^{mn}+k^{m(n+1)/2}+k^{(m+1)n/2}+k^{(mn+1)/2}) & (m=2i+1,n=2j+1)
\end{dcases}
\end{align}
\]となる。これを整理すれば解法 1 の結果と一致する。
ja.wikipedia.org
〆
ちなみに元の問題は $k=2,m=2,n=3$ の場合だから、$D_{2,3}=24$ 通り。
$k=2,m=2$ の場合の $n$ だけ一般化したものを $n=0,1$ を初期値とした連立漸化式で最初に解き、そのまま $k$ を一般化したのだが、$m$ を一般化するにあたり解法 1 に変更し、さらに執筆中に界隈で Cauchy-Frobenius の定理が話題になっていたので解法 2 を追加するという経緯をたどっている。
テレ東BIZの『橋本幸治の理系通信』に出演させていただきました!
— 佐久間 (@keisankionwykip) 2025年3月4日
拙著『高校数学を大学数学で解く「チート解法」』の内容を少しだけ紹介しています。
一本の動画に収めるために解説は大雑把にしかしていませんが、チート解法の威力と刺激は味わえるのではないかと思います。https://t.co/nLJYQczFvt pic.twitter.com/9q9FFaunC5
そして OEIS には $k=2$ の場合がある。

