ヨーキョクデイ

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地方自治法の定めるリコールに必要な署名数についての要件を調べてみた

いきさつはこのツイーヨ。

リコールについては若かりし時分に習った気がするのだが、何分の何みたいなのは覚えていなかったので調べることにした。

ja.wikipedia.org

どうやら、首長・議員・役員の解職、議会の解散のいずれも同等の署名数で定められているようだが、ちょっと表記がややこしいことになっている。そもそも自分が中学の公民を聞いていた時代とは数が変わっていないか。

代表して、都道府県知事および市町村長のリコールについて定めた、地方自治法 81 条の 1 項を抜き出してみる。

選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の三分の一その総数が四十万を超え八十万以下の場合にあつてはその四十万を超える数に六分の一を乗じて得た数と四十万に三分の一を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が八十万を超える場合にあつてはその八十万を超える数に八分の一を乗じて得た数と四十万に六分の一を乗じて得た数と四十万に三分の一を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつて、その代表者から、普通地方公共団体選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる。

e-Gov法令検索

何やら有権者数に関して条件が 3 つあって、それぞれのケースにおいて必要な署名の数が異なるようだが、ぱっと見でそれがどういう計算によるのかがわかりにくい。そこで、これらを数式に書き下す。つまり、「選挙権を有する者は、(中略)その総数を正整数として  p としたとき、 n(p) なる実数が存在して、この数以上の者の連署をもって(以下略)」ということにする。そして  n(p) とはどう書き表されるかという問題である。

まず、めんどくさいので  K = 400000 とおく。すると、上記の条文で示された数はそれぞれ次のように書き直される。

i) 「その総数の三分の一

\displaystyle \frac{p}{3}

ii) 「その総数が四十万を超え八十万以下の場合にあつてはその四十万を超える数に六分の一を乗じて得た数と四十万に三分の一を乗じて得た数とを合算して得た数

\displaystyle \frac{1}{6}(p-K)+\frac{1}{3}K

iii) 「その総数が八十万を超える場合にあつてはその八十万を超える数に八分の一を乗じて得た数と四十万に六分の一を乗じて得た数と四十万に三分の一を乗じて得た数とを合算して得た数

\displaystyle \frac{1}{8}(p-2K)+\frac{1}{6}K+\frac{1}{3}K

ふざけるなという感想しか出ないが、何かしらの意図があってこういう書き方をしたのだろう。さらに、式を整理して、まとめて書くと、

 n(p)=
\begin{cases}
\displaystyle \frac{p}{3} & (p \leq K) \\
\displaystyle \frac{1}{6} (p+K) & (K < p \leq 2K) \\
\displaystyle \frac{1}{8} (p+2K) & (2K < p)
\end{cases}

となり、これが所望の式である。

蛇足だが、i) が元来あったもので、これが全  p に適用されていて、自分が習ったのはこのバージョンのようだ。また、平成 14 年法律第 4 号とやらにより、要件が緩和されたようなのだが、それが ii) であり、  p > K に対して適用されていたらしい。さらに、平成 24 年法律第 72 号とやらにより、さらに緩和され、それが現行のバージョンであり、iii) が追加されたという流れのようだ。

例として、最初に挙げたツイートのように、横浜市長をクビにしたいと思った場合を考えよう。

www.city.yokohama.lg.jp

上記に横浜市有権者数がまとめられているが、2019 年 9 月 1 日付けのデータでは、 p=3114475 である。これは 300 万強であって 80 万を超えるので、

\displaystyle n(p)=\frac{p+2K}{8}

に代入することにより、

\displaystyle n(3114475)=\frac{3114475+800000}{8}=\frac{3914475}{8}=489309.375

が得られる。すなわち、この数以上の署名が必要であるということなので、小数部分を切り上げて、最低でも 48 万 9310 人分の署名が必要ということがわかる。大変よね。

最後にグラフを載せる。実線部が今回求めた現行の法律に基づく  n(p) であって、横軸に有権者数、縦軸に必要な署名数をとってある。点線部は改正前のイメージであり、どう緩和されてきたかを視覚化した。

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有権者数に対する、リコールに必要な署名数